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【書評】加藤直樹『九月、東京の路上で -1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』【ひとことレビュー#2】


加藤直樹『九月、東京の路上で -1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』ころから, 2014年. 書影
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ひとことレビュー #2

加藤直樹『九月、東京の路上で -1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』ころから, 2014年.



関東大震災が起こったとき、関東一円では、朝鮮人が井戸に毒を入れたというフェイクニュースが広がり、警察が先導し、「普通の人」たちが「朝鮮人」と見られる人たちを虐殺して回った。その中には、「殺されなければならない朝鮮人」と間違えられた沖縄や地方出身者、障がい者なども多く含まれていた。実際にその中にいた人たちは、それをどのように書き残しているのか。現東京都知事小池百合子がその事実を否定し、歴史を改竄しようとしているからこそ知っておくべき私たちの過去の過ち。そこから私たちはどう生き、歴史と向き合うかを考える必要がある。

(あるぼりーと) 

目次

まえがき 新大久保の路上から

年譜

本書に登場する事件の現場地図

凡例

 

第1章 1923年9月、ジェノサイドの街で
 9月1日

  関東地方 マグニチュード7.9

 9月2日

  品川警察署前 「朝鮮人を殺せ」

  旧四ツ木橋付近 薪の山のように

  神楽坂下 神楽坂、白昼の凶行

  警視庁 警察がデマを信じるとき

  亀戸駅付近 騒擾の街

  千歳烏山 椎の木は誰のために

 9月

  旧四ツ木橋付近 「何もしていない」と泣いていた

 9月3日

  上野公園 流されやすい人

  東大島 中国人はなぜ殺されたのか

  永代橋付近 曖昧さに埋められているのは

 9月4日

  京成線・荒川鉄橋上 体に残った無数の傷

  亀戸署 警察著の中で

 9月

  旧四ツ木橋 兵隊の機関銃で殺された

 

第2章 1923日9月、地方へと拡がる悪夢

 9月

  北関東 流言は列車に乗って

 9月4日

  熊谷 「万歳」の声とともに

 9月5日

  旧・羅漢寺付近 差し出された16人

 9月6日

  寄居警察分署 ある隣人の死

 9月

  高円寺 「半月おじいさん」の高円寺

 9月9日

  池袋 あそこに朝鮮人が行く!

 9月

  喜平橋 武蔵野の森の奥で

 9月12日

  逆井橋 王希天、70年の「行方不明」

 

第3章 あの9月を生きた人々

  あまりにもひどい光景だった ノンフィクション作家・保阪正康の父が生きた人生

  「鮮人の頭だけがころがつて居ました」 子どもたちの見た朝鮮人虐殺

  間違えられた日本人 「千田是也」を生んだ出来事

  75年後に掘り出された遺骨 習志野収容所で殺された人々

  「あの朝鮮人たちに指一本ふれさせねえぞ」 隣人をかくまった村人たち

  化石しろ、醜い骸骨! 秋田雨雀の「さびしさ」

  おん身らは誰を殺したと思ふ 折口信夫が見た日本人の別の貌

  いわんや殺戮を喜ぶなどは 芥川龍之介の「韜晦」

  「無所属の人」の憤激 反骨の帝国議会議員・田渕豊吉

  俯瞰的な視点① 虐殺はなぜ起こったのか

  俯瞰的な視点② いったい何人殺されたのか

 

第4章 90年後の「9月」

  悼む人々 「四ツ木橋」のたもとに建った碑

  憎む人々 よみがえる「朝鮮人を殺せ」

  2005年、ニューオリンズの路上で

  東京は今も、90年前のトラウマを抱えている

  石原「三国人」発言とエリートパニック

  「非人間」化に抗する

 

参考文献一覧

関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺をもっと知るためのブックガイド

あとがき